ロボットの設計のやり方1 ~仕様決定編~

先輩(2019年)からの技術継承1

編集者から

こちらは、先輩が作成したtxt文章を物理部パソコンから発見し、こちらのサイト向けに書き直したものです。
忙しい中、このような素晴らしい記事を書いてくださった先輩に、感謝の意を表します。

優先順位

ロボットを設計するにあたって、まずどんなロボットを 作るのかを決める必要があります。

その際、最も優先すべきことは「ちゃんとロボットが動くこと」です。
次に丈夫であることです。性能などはその次に考えましょう。どんなに性能が良くてもまともに動かなければ意味がありません。
またいろんな種類のパーツをつけると、それだけソフト担当に負担がかかります。(要は器用貧乏になる可能性があります。)

あとは整備のしやすさも重要です。電池交換や修理のしやすさはそのまま稼働率に影響します。

以上の通り、優先順位をつけると
規定»(越えられない壁)»安定性>=耐久性»整備性>=性能>機能>(その他)
となります。

機体の仕様

次に、機体の仕様を決めます。ここで決めるのはモーター、ホイール、板、電池の4つです。

モーター

モーターはロボットの機動力を左右する部分です。
とは言っても、とりあえずダイセンギヤードモーターを使えばいいので、重要なのは数とギア比です。
モーターの数は2~4つが多く使われます。

2輪

  • メリット
    • 軽い
    • 制御が楽
  • デメリット
    • 方向転換に旋回が必要

3輪

  • メリット
    • 斜めに移動可能
  • デメリット
    • 制御がやや難しい
    • 前後左右がやや面倒

4輪

  • メリット
    • 制御がやや楽
    • 前後左右の概念がある
  • デメリット
    • 重い
    • 物理部では作成経験無し

とりあえず3輪を採用することにしていますが、十分に技術が発達したら2輪や4輪をやってみてもいいかもしれません。

また、ギア比については、15:1か30:1を使えば良いです。
15:1は速度は出ますが力が弱く、逆に30:1は力がありますが速度が遅いです。
15:1でろくに動かなかったら30:1を採用すればいいでしょう。

ホイール

2輪の場合は普通のホイールでもいいのですが、3輪や4輪ではオムニホイールというものを使う必要があります。
(むしろオムニホイールが3輪や4輪を可能にしているのですが…)
直径とか重さとかも考える必要があります。(とりあえず45mmくらいでいいと思います)
あと、モーターの軸に合ったものを買いましょう。

メカナムホイール…? 知らない子ですね…。

板もまた重要な部分です。ここではいくつかの素材とその特徴を書いておきます。

アクリル

  • メリット
    • 軽い
    • 安い
  • デメリット
    • やや割れやすい
    • 加工がやや大変

アルミ

  • メリット
    • 加工がやや楽
    • 割れない
  • デメリット
    • やや重い
    • 曲がる
    • つや消しする必要がある

FRP

  • メリット
    • 軽い
    • 割れにくい
  • デメリット
    • 加工が大変
    • 使ったことがない
    • 高い
    • 衝撃に弱いらしい

他にも色々あると思うので、良いのが見つかったら試してみましょう。

モーターと板(と基板)の配置についてはいくつかのパターンがあります。

2枚、モーターが上
下から板、モーター、板、基板となる配置。物理部でメインで使っている配置です。

  • メリット
    • 板の間に物を置けるので
    • 壊れにくい
  • デメリット
    • ごちゃごちゃする
    • 整備が面倒

2枚、モーターが下
下からモーター、板、板、基板となる配置。

  • メリット
    • 板の間のスペースが広い
    • 整備が楽
    • 小さいホイールが使える
  • デメリット
    • 板の下にセンサをつけると、干渉とかが面倒

1枚
下からモーター、板、基板となる配置。かつての先輩はこの配置を採用したらしいです。

  • メリット
    • 板が1枚なので軽い
  • デメリット
    • 板の上がごちゃごちゃしそう

後は、基板の上に板をつける配置もあります。最適なものを選びましょう。

電源(バッテリー)

当たり前ですが、電源がなければロボットは動きません。
Arduinoだけならちょっとした電池で足りるのですが、モーターを長時間動かし続けるとなると、大容量の電池が必要となります。
そこで電池の種類と特徴を書いておきます。

普通の乾電池
いつもの使い捨てタイプのやつです

  • メリット
    • ほぼない
  • デメリット
    • 使い捨てのため、コストがクッソかかる
    • 現状、9V角型のをarduinoなどの電源に使っているが、もしかしたらモーター用電源から引っ張ってきた方がいいかもしれない

NiCd(ニカド)電池
昔主流だった充電池。今はほとんど使われない。

  • メリット
    • かなり安い
  • デメリット
    • カドミウムが有害
    • メモリー効果がある

NiMH(ニッケル水素)電池
ニカド電池の代わりに使われるようになった充電池。乾電池型のものもある(エネループとか)

  • メリット
    • 安い
    • 大容量のものもある
    • 安全
  • デメリット
    • メモリー効果がある

とりあえず迷ったらこれでいいんじゃないかな。

Li-ion(リチウムイオン)電池
現在主流の充電池。容量が大きいが、危険性も高い(爆発する可能性あり)
そのため、ロボカップジュニアジャパンでは使用が制限されている。
使うときはレギュレーションをちゃんと読んで、必要な書類を提出しなければならない。(一敗)

LiPo(リチウムポリマー)電池
スマホのバッテリーにも使われるやつ

  • メリット
    • 大容量
    • 電圧が高い
  • デメリット
    • 取り扱いを間違えると爆発する危険性がある
      (一応安全な方らしいのだが…)

そんなわけでお勧めできない。

LiFe(リチウムフェライト)電池
LiPoに代わって広まりつつある電池。ラジコンにも使われたりする

  • メリット
    • 容量がやや大きい
    • 電圧も高い
    • LiPoより安全(釘刺しても燃えない)
  • デメリット
    • 初期費用が高い
    • LiPoよりは性能が劣る(でも十分かも?)

もし使うならこっちをおすすめする。

設計思想

結構長くなりましたが、これでだいたい機体の仕様は決まるはずです。
…それでも、どんなロボットを作ろうか迷っているかもしれません。
そこで、いくつかの戦闘機の設計思想を書いておきます。
「え、何で戦闘機?しかも唐突に」と、思っているかもしれませんが、
戦闘機は兵器ゆえ、ちゃんと動作し、(自分たちに)安全で、故障しにくく、運用しやすく…
と、ロボットの開発と共通する部分が多いのです。(もちろん、戦車など他の兵器にも同じことが言えます)
というわけで、

  • 零式艦上戦闘機
    要求: 貧弱なエンジンで最強の戦闘機作って
    結果: 装甲を捨て、旋回性能と航続距離に特化

  • 流星艦上攻撃機
    経緯: 艦上攻撃機(重い、敵艦撃沈目的)と艦上爆撃機(軽い、急降下爆撃専門)が段々要求性能が似てきた
    結果: 急降下爆撃、水平爆撃、雷撃、全部できるやつを作ろう

  • 震電
    経緯: B-29迎撃する必要がある
    結果: 高速化のためエンジンとプロペラを後ろに配置、尾翼が前にある機体に
    (なお、開発中に終戦)

  • A-4 スカイホーク
    経緯: 核爆弾を搭載可能なまともな機体がない、あってもでかい…
    要求: 小型で安価で核爆弾積めるやつ作って
    結果: 機体をシンプル、軽量、小型化したら積載量が4tに、しかも機動力、整備性も良くなった

  • A-10 サンダーボルトII
    要求: 長時間の空中待機、低速での運動性能、強力な機関砲、卓越した生存性を備え、ローコストな航空支援用の機体を作って
    結果: 悪条件下でも運用可能、多くの部品が左右共通など整備性も良い、加えて異常な耐久力を備え、湾岸戦争で大活躍した
    これみたいなロボットが僕の理想でした。できなかったのですが。

他にもF-14 F-15 F-16 F/A-18 F-35とかいろいろあるので調べてみてください

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